共済コラム
もうひとつの3.11を忘れない
2018年3月1日
東日本大震災から間もなく7年。未曾有の災害を起こした福島第一原発事故周辺地域を昨秋に再訪した。今も帰還困難区域内の国道6号線は二輪車の走行が禁止され(当然、歩行者も)、四輪車も窓を開けてはいけない。眼下に広がる風景は、本来なら稲穂が黄金色に輝いているはずの水田が藪と化し、建物や国道につながる道路には全てバリケードが張られている。
避難指示(一部)解除区域でも帰還された住民は少数だとお聴きした。この地はあの日から時間が止まり復興への道のりは険しい。人々にとっても「もう7年、まだ7年」、複雑な心境だろう。本稿で原発政策を論じることは控えるが、今なお、故郷を離れ苦悩している人々のことや、廃炉作業に汗している労働者の苦労を忘れてはならない。
さらに今、福島を苦しめているのは「二つの風」。一つは「風化」、時間の経過とともに報道なども少なくなり人々の関心も薄れている。二つは「風評」、福島の農産物や水産物等は言われのない被害にあっている。二つの風とも人間の力で抑制できるはず。
地本は、毎年「3.11を忘れない関東集会」を開催している。今年は「心ひとつに運動」で絆を紡いできた岩手南リアス支部内の大船渡市で開催するという。関東も被災地であることを忘れず、東北の被災地から「7年目の現状」に目を向け、何ができるか考えてほしい。
そして、もうひとつ忘れないでほしいのは、あの時に共済がはたした役割である。東日本大震災でJP共済生協が組合員に支払った共済金は、自然災害共済だけで約11億6千万円、特別見舞金も約8億9千万円に上る。関東でも共済金約1億3千万円、特別見舞金6千2百万円に加え、全国から寄せられたお見舞金を組合員に届けた。その後、2015年には鬼怒川堤防が決壊する災害が発生し、その際も共済金と全国から届いた義援金を被災された組合員に手交した。共済は、全てを元に戻せないが、被災後の生活を支えることができる。
だからこそ思い出してほしい。あの時、関東の共済加入率を向上させて全国の仲間に恩返しすると誓ったことを。しかし、関東共済は低迷の域を出ない。現在、各職場での共済説明会をお願いしている。ぜひ、自分自身を守り仲間を救うために参加してほしい。
「震災とは過去の出来事ではなく、被災者にとっては終わりのない現実である」とは、福島県出身の作家、志賀泉さんの言葉。噛みしめたい。
(komu-taka)