共済コラム

徹底現場主義

2021年3月1日

 新型コロナウイルスの感染者は世界で1億人を超え、死亡者は230万人を数える。米国での死者は50万人を超えたそうだ。この数は2つの世界大戦とベトナム戦争での米国人の死者合計を上回っており、いかに大変な惨禍なのかを物語っている。日本でも感染者が42万人に迫り、死亡者が7千人を超えた。(本原稿執筆時)。国民は、先行きの見えない不安や長引く自粛で疲れ切っている。筆者も生協本部からの会食厳禁のお達しを守り、居酒屋どころか外食すら自粛し、単身赴任の身には辛い日々が続いている。

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 こういう時こそ政治の力が必要なのに、与党国会議員達の夜の銀座クラブ活動、東京オリパラ組織委員会会長の女性蔑視発言、首相長男による総務省幹部接待問題など、政府の劣化は深刻である。

 

 そんな中、全国の医師を対象にした知事のコロナ対応とリーダーシップを尋ねたアンケートが実施され、福井県知事が全国トップになった。評価されたのは、全国で初めて軽症者・無症状者用施設の設置、妊婦のPCR検査の実施、看護師等への特別手当の支給、入手困難だったマスク購入券の全世帯への配布などを昨年4月の時点で実施したことだ。福井県医師会の会長は「危機管理はトップが現場の状況を即理解し、即決断して即行動に移すかにかかっている。知事は現場の声をしっかり聞いてくれる」と話す。ちなみに、筆者の住む栃木県は、残念ながら38位だった。

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 知事の政策のひとつに、「徹底現場主義による県民主役の県政の実現」がある。それは、知事をはじめ職員が積極的に現場に赴き、県民から直接話を伺い、生の現状を見て理解し課題を把握する、そこから解決策を決めて動くというもの。さらに、この「現場を見て、理解し、決めて、行動する」というサイクルを早く回すために、部局に権限を与えている。できるだけ現場に近いところで仕事を進めることが県民主役の県政につながるという考え方である。現場主義を提唱する経営者や労組幹部はいるが、「徹底」が付くところに強い信念を感じる。筆者にとって、中坊弁護士の「現場に神宿る」、踊る大捜査線の「事件は会議室で起きてるんじゃない!現場で起きてるんだ!」に匹敵するインパクトだった。

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 この「現場」を「職場」、「県民」を「組合員」に代えたらどうだろうか。かつて、筆者も先輩から口酸っぱく職場オルグの大切さを叩き込まれた。労組役員人生を振り返れば、職場オルグに鍛えられ、育てられた感すらある。組織が厳しい時、苦しい時こそ、原点に返り「職場に足を運び、職場実態に目を凝らし、組合員の声に耳を傾け、本質を見極めて早期解決の道を探ること」を訴え、自ら率先して実践した自負がある。それを「組合員優先主義」と議案書に書いた。当然にして、今の共済活動でも大切にしている。また、現場への権限移譲も古くて新しい課題で、郵政省時代から経営側に強く求めてきた。先般、目にしたJP労組の大会議案書に「コロナ禍での『新たな生活様式』を意識した取り組みを模索する」とあった。どうも、筆者のような古い人間には、最近のJP労組の姿が職場オルグ不足と会社経営最優先に写る。コロナ禍だからこそ「徹底現場主義」と「組合員主役」のマインドを忘れないでほしいと思う。

 

 

 

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 諏訪中央病院の鎌田名誉院長は、感染収束の切り札として期待されるワクチン接種の後れは、政治のリーダーシップの問題だと指摘すると同時に、ワクチンの安全性に不安を抱く患者に「ワクチンには、良い面も悪い面もあるから自己決定が大事だよ」と言い、「僕自身は、今のところ順番が来たらワクチンを打とうと思っている」と答えているそうだ。氏の優しい人柄が滲み出ている。様々な情報が飛び交っているが、できるだけ正しい情報を得て、一人一人が周囲に流されず判断することが重要なのだろう。一刻も早い平穏な日々の訪れを願ってやまない。

 

 

 

(komu-taka)

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日本郵政グループ労働組合中央本部