共済コラム

すべては対話から始まる

2019年4月25日

  久しぶりに良い映画に出会えた。実在した黒人ピアニストと白人運転手との実話をもとに、人種を超えた友情や人間の尊厳をロードムービーとして描き、今年の米国アカデミー賞作品賞に輝いた「グリーンブック」である。

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時は1962年、米国の中でも黒人差別がひどかった南部でコンサートツアーを敢行するため、用心棒を兼ねて白人運転手が雇われるところから物語は始まる。黒人はレストランやホテルはおろかトイレさえ白人と同じ施設を使うことが許されないなど、行く先々で耐え難い仕打ちに遭う。白人運転手も黒人を見下す意識があり、最初はぶつかり合ったが行動をともにし、理不尽な扱いを受けるうちに気持ちが変わっていく・・・。
 タイトルの「グリーンブック」とは、黒人旅行者が利用できる宿泊施設などを載せたガイドブックのこと。1936年~66年に出版され、劇中でもこの本で宿を探す場面が幾度もある。この映画の監督は言う。「本の存在を知っている人がほとんどいないので、このタイトルは反対された。でも、この本が存在した歴史を伝えたい思いも強かった。タイトルを変えなくてよかった」と。また、「現代の米国は、50年前と根本的に変わっていないどころか、人種差別や白人至上主義が再び勢いづいている。だから『グリーンブック』は現代に生きる私たちの物語でもある」と話す。

 

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 劇中で二人の結びつきを強め、物語を豊かにしているのが、道中に運転手が出す妻への手紙(実際の手紙が67通残っているという)。遠く離れた妻は手紙の文面に歓喜するが、その手紙、実は?(ラストシーンを楽しみに)。話は変わって、ある日テレビを観ていると、88歳で自営のパン屋さんで働くおばあさんが店の奥から持ってきたのは一通のお礼状。「美味しかった」と店頭で言われることはあるが手紙は初めて、「わが家の宝、明日の活力」と話された。

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日本でも、デジタルツールを用いたコミュニケーションが主流となり、手紙を書く機会は大きく減少しているが、手紙の力とは、単に要件を伝えるだけではなく、書き手の心遣いが届くことではないか。この映画も手紙にまつわる関係こそが「心」であり、全く異なる2人が話し合う中でお互いのことを理解しあえたように、「すべては対話から始まる」。これがメッセージだろう。それは国際関係でも、職場、地域、そして(自戒を込めて)家庭でも同じだと思う。

 

 現在、共済金の未請求ゼロに向けた取組みを強化しているが、共済事由発生から3年経過すると特別な手続きが必要となる「時効案件」が一向に減らない。連協から届く理由書には判で押したように、「世話役活動不足」と書いてあるが、世話役活動は、言い換えれば組合員との対話そのものである。そこからすべてが始まることを肝に銘じたい。
 ちなみに、日本郵便では、手紙文化の振興ということで手紙の書き方体験授業や青少年ペンフレンド活動などの支援をしているそうだが、経営幹部の皆さん、最近、手紙書きましたか? 
                                (Komu-Taka)

 

 

 





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