最近想うこと(雑感)~イノベーションと人への投資~
2016年11月30日
拝啓 11月24日の積雪には大変驚きました。組合員の皆さんお元気ですか。寒さ厳しき折、連日大変お疲れ様です。
11月27日、宮城県で行われた全日本実業団女子駅伝では、JP日本郵政グループが初優勝を飾り第36代駅伝女王に輝きました。創部3年目での金字塔です。久々の明るいニュースに私も感動です。明るい働きがいのある職場づくりに向けて、元気をいただきました。
さて、先日、郵政グループ各社の中間決算が発表されましたが、グループトータルでは前年比大幅な減収減益となりました。経営状況は、新たな枠組みで闘うこととなる2017春闘に直接影響することになります。私は、通期決算に向けて子会社を含めたグループのトータルパワーを結集する道筋を明確にしたうえで、地方労使が責任を共有し、そのリード役を果たすことが重要だとグループ経営協議会で申し上げたところです。
その際、最近思っている問題意識というほど大げさではありませんが、心配事を申し上げました。
先日、地本が開催したゆうちょ銀行・かんぽ生命職場代表者会議において、かんぽ生命幹部から貴重なお話を伺う機会がありました。それは、国内保険会社としては初めて、IBMワトソンを活用し保険金支払業務で高度な判断が必要とされる査定に役立て、10年近い経験が必要だった査定業務を、比較的経験の浅い社員でも実施可能にするとともに、今後、コールセンター分野でも活用するなど品質や生産性向上を目指すというものでした。
このようにIoT、AI(人工知能)、ビッグデータなどを多角的に活用して大きなイノベーションが起きており、国内電機各社も今後3年間で約3000億円をAIに技術投資するといいます。また、既に、先ほどのワトソンは、他行でコールセンターや顧客サービスなどに活用されている模様ですし、AIを活用して、窓口接遇の評価システムも実用化が進んでいるとの報道も目にしました。
さらに物流の世界では、日々の物量に応じた要員配置をAIが算出するシステム開発が始まったといいます。こうした第4次産業革命と言われる時代の中で、この間、繰り返された郵便システムの混乱を思うと少々不安を禁じ得ません。
一方、言うまでもなく郵政グループは、労働集約型で人的依存度の高いマンパワーの会社であり、むろん組合員は頑張っています。いくら時代が変化しても、ヒューマンスキルというのか、人間しかできないことはたくさんあると思います。したがって、人への投資、人財育成が喫緊の課題であるのにもかかわらず、郵便・集配職場の要員、渉外社員、必要な備品が不足しているとの声は相変わらず根強くあり、改善を急がなくてはなりません。
先般、2015年の国勢調査の速報値が発表され、初めて人口減少がデータ的に立証されました。そのことは、市場の縮小や労働力人口の減少も意味しており、既に各企業で人材の囲い込みが始まっている模様です。さらに、広告代理店「電通」の過労自殺問題を契機に、長時間労働是正に対する社会的関心が高くなっており、国会での議論され、政府も「働き方改革実現会議」において議論をしています。
私は、コストコントロールがコストチェックになっていないか、超勤時間削減と超勤手当削減が混同していないか、要員不足は解消したのか、土日営業の問題は、など、郵政グループにおける「働き方改革」の議論を開始しないといけないと思っています。
いずれにしても、時代と環境の変化にどう向き合うのか、そして、イノベーションと人への投資について多面的な視点から議論をしたいと思います。
組合員の皆さん、これから最繁忙期、寒さも本番、くれぐれもご自愛ください。
敬具
2016年11月30日
日本郵政グループ労働組合関東地方本部
執行委員長 小室 隆行
追伸
私は、11月6日に開催した「ゆうちょ・かんぽ職場代表者会議」において、参加者の皆さんに次のように挨拶させていただきました。ご一読いただければ幸いです。
ゆうちょ・かんぽ職場代表者会議あいさつ
皆さんおはようございます。ご紹介をいただいた地方本部の小室でございます。本日は、関東各地から、日曜日にもかかわらずご出席いただき大変ありがとうございます。また、日頃からJP労組の活動を献身的に担っていただき、感謝を申し上げる次第です。
私から地本執行委員会を代表してごあいさつを申し上げます。
まず、7月の第24回参議院選挙における、それぞれの選挙区と、比例区・なんば候補勝利へのご奮闘に感謝申し上げます。なんば候補の得票は、191,823票、関東では29,268票、3年前から12,000票強増やし、南総支部だけであった得票数が居住組合員を上回った支部も16支部を数えるなどの成果もありました。改めて、お互いの健闘を称えあいたいと思います。本当にありがとうございました。
選挙は勝った時ほど総括が重要となります。最終的な総括は2月の中央委員会となりますが、大切なことは191,823票という得票を、慎重に、そして現実的に分析して、3年後の戦いにつなげることだと思っております。いずれにしましても、皆様からいただいた一票の重み、そして、一票、一票に託されたお一人おひとりの想いを大切に、選挙期間中に約束した公約実現につなげてまいりたいと思います。
そのためには、組織拡大や「みらい研」の加入促進を図り、JP労組関東に力をつけることだと思っております。この成果を力にして、運動を前へ進める、その想いを皆さんと冒頭に共有したいと思います。
一方、残念ながら選挙結果は、改憲勢力3分の2と自民党の単独過半数を許すこととなり、安倍暴走内閣のスピードは加速度を増しております。それは、安倍総理の人を見下した態度、都合が悪くなるとすぐ切れる、劣勢となると民主党政権時の悪口、寛容さなど微塵もない振る舞いに表れており、これが一国の首相かと呆れるばかりであります。まさに、安倍政権のおごり、緩み、劣化が止まらない、その象徴が山本大臣のTPP強行採決発言。国民もそうした本質を見抜き、憲法改正やTPP審議についても慎重にというのが、多数の世論でありましたが、TPPは11月4日衆議院で委員会を通過しました。
そして永田町では年末、あるいは通常国会冒頭に解散風が強く吹いており、現実味を帯びてまいりました。組織内議員である千葉9区奥野総一郎衆議院議員をはじめ、推薦する候補の勝利に向けた態勢確立を急ぎたいと思います。
次に、最近のニュースから考えさせられたことがあります。
一つは、沖縄の米軍施設反対運動の人々に大阪府警の機動隊員が「土人」「シナジン」と罵倒したこと。仮にも法の執行者とは思えない差別意識、排外感情丸出しの暴言。さらに驚いたのは、松井大阪府知事。「一生懸命やっている、出張ご苦労様」との彼らを擁護するツイートをしました。
もう一つは、大手広告代理店電通の新入社員の過労自死が労災認定されたこと、パワハラもあった模様。電通は25年前にも社員の自殺があり、それが契機となって「過労死」の言葉が世界に広がり、今でも、「カラオケ」「津波」とともに「過労死」は「KAROUSHI」と全世界でそのまま通じると言います。電通は、同じ過ちを繰り返しました。二つの出来事ともに、組織風土が強く影響していると思います。
ひるがえって、郵政グループはどうでしょうか。企業風土改革が叫ばれて久しいものがあり、会社は社風改革に名前を変えての動きをしているようですが、その方向性はどうなのか。我が社の企業風土、JP労組の組織風土という観点から検証する必要があると感じています。
そんな中で、我が国の組織体質とも言うべき長時間労働、同一労働同一賃金、介護離職者の増加などをテーマに「働き方改革」の議論が開始されました。「働き方改革実現会議」の24名の委員に神津連合会長が選出されましたので期待したいと思いますが、労働者代表が会長一人であることを見ても、どうも「働き方」というより企業や国の側に立った「働かせ方改革」になっておりますし、残業代ゼロ法案や解雇の金銭解決の「隠れ蓑」の役割をしているように感じています。
何かと抜け穴の多い36協定の規制強化や長時間労働にメスを入れることは当然としても、ワークライフバランスなど無縁な多くの企業で残業が常態化している原因の追求と、残業手当がないと生活がまかなえない賃金水準改善をセットで論じるべきと考えております。
最近の報道によれば今年日本は、総体的貧困率が過去最高を記録したようです。今や、トリクルダウン型の経済政策であるアベノミクスの限界は明白であり、事実、約7割の国民が恩恵を実感しておりません。それどころか経済の好循環への道筋が依然見い出せず、働く者・生活者の暮らしに目を向ければ、容認できない格差が拡大を続け、社会のひずみが顕著になっています。加えて、少子高齢化・人口減少問題、社会保障制度の維持に必要な安定的な財源が確保できないなど、将来への不安も絶えません。
アベノミクスで行き詰まった政府は、今になって、「ニッポン一億総活躍プラン」、先ほど申し上げた「働き方改革」などを打ち出してきました。しかし、これまで一貫して長時間労働是正や、非正規雇用で働く者の処遇改善を求めてきたのは、われわれ労働組合であります。政府が本気でこうした課題解決を目指すのであれば、働く者・生活者の現状を直視し、われわれ働く者の声を聴き、真に実効ある対応を行うべきであります。
また、17春闘では、郵政部内の格差是正についても本格的な議論をしなければならないと思っています。これからも連合の仲間とともに、「暮らしの底上げキャンペーン」の運動をさらに展開するとともに、われわれの暮らしに直結する17春闘の論議を開始したいと思います。
次に、ゆうちょ、かんぽの経営状況ですが、詳細については後ほどの分科会や、両エリア本部長の講話に委ねたいと思いますが、マイナス金利が今後も続くことが想定される中で、運用益を確保することが経営戦略上大きな課題であると認識しております。また、職場では、かんぽ保険料改定後の収益減や、ゆうちょ集中満期対策という環境下で、さまざまな職場課題が内在しております。
一方、ゆうちょ、かんぽの損益は、その構造上、グループ全体の経営に与える影響が極めて大きいものがあります。特に日本郵便では、中間決算を間近に控えている今日段階で、対前年比で収益が上回っているものの、金融2社による窓口の委託手数料収入減などによって、経営側として中計ベースだと非常に厳しいと、強い危惧を示している模様であります。
加えて言えば、グループ3社の株価も低迷している状況にあり、それは、新たな枠組みで闘うこととなる17春闘にも影響を及ぼすことになります。
そうした中で、本日は、11月21~22日にかけて開催される全国政策制度討論集会のテーマである、ゆうちょ銀行の手当制度はどうあるべきか、かんぽ生命を魅力ある会社とするためにはどうすべきかについて論議いただくとともに、地方課題として企業風土と労使関係、職場の基盤整備を中心にご論議をいただきます。
職場実態に即した働く者の目線での英知を結集する立場で、皆さんの議論に期待するものであります。
最後に申し上げます。
2007年10月1日の郵政民営分社化から9年、そして昨年11月の株式上場から1年が経過しようとしております。一方、JP労組も2007年10月22日の結成ですから、丸9年経過し、われわれは結成10年の節目に向けて歩みを開始しました。そして、明年6月の全国大会では、今後の10年を展望した新たな運動の方向性を決定することにしており、今、極めて重要な時間帯にあります。
ご案内の通り、JP労組は結成時に組織戦略の大きな柱として30万人組織建設を掲げ、ユニオンショップ協定の締結も目指してきました。しかし、10年を迎えようとする今でも組織数は24万人台にとどまっており、関東も当面の目標である33,000名さえも届いていない現状であります。
関東における、ゆうちょ銀行、かんぽ生命の正社員の組織状況は全国平均と同等になっておりますが、期間雇用社員、パートナー社員を含めますと60~70%台に低下し、過半数を割り込んでいる職場も相当数存在しております。
関東の課題は、日本郵便の窓口局正社員であることは明らかですので、現在、各支部で組織化を本気で取り組んでいただいておりますが、ゆうちょ、かんぽでも、最近の新規採用者の未加入者も数多く存在しており、問題意識を強くしております。とりわけ、ユニシ協定は、締結したとしても組織数が過半数を割り込むとその効力を失うという制度であり、現在の組織率では、仮に締結したとしてもいつ効力を失うかわからない不安定な状況であり、経営側が決断できない大きな背景と想定しております。
皆さんには、大変なご苦労をいただきますが、この壁を乗り越えない限り、関東の成長はありません。「仲間をつくり、仲間を守る」という基本認識を共有して、皆さんのご奮闘を切に要請し、地本を代表しての感謝と連帯のあいさつとしたいと思います。
一緒に頑張りましょう。
以上